ただ、この本を読んだからと言って他の人間にも同じことができるかと言ったら答えはNOだと思います。
本書において「逮捕しちゃうぞ」「ああっ女神さまっ」の2作はいずれも編集者の鶴の一声から企画がスタートしたことが明かされており、「女神さまっ」についてはそこからどのようにアイディアを膨らませていったかも書かれていて、それは非常に興味深い内容ではあるのですが……。そのプロセスがさほど深く紹介されているわけではないので、実践的とは言いづらい。
唯一実践的と言える内容だったのは、「ネームのつくりかた」ですね。藤島先生は「とにかくわかりやすく」をテーマにされていると語り、具体的にどういったことを心がけているか――最初の数コマで主人公の置かれている状況を説明する、動きをなるべく少ないコマ数で表現する、など――を語ります。
そしてそれが実際にどのように生かされたかを、「ああっ女神さまっ」連載第1話を解説することで説明しているのです(20年前の作品を解説させられるってどんな拷問だよ……とは思いますが)。これは分かりやすい。漫画と解説を見比べると「こんな意図があったのか!」というのがみるみる伝わってきて嬉しくなります。この「気づき」(俺はこの言葉が大嫌いなんだが)は、一見の価値ありです。
で、藤島先生がすごいなあと思うのは、解説を聞かされて漫画を読みなおすと、確かにそうだなあと納得できるところなんですよ。そういう意味で、彼のネームは非常に「わかりやすい」。これは特筆すべき点だと思います。
本書では、アフタヌーン編集部の一部の部員が新人や漫画家志望者に対して藤島先生の作品を教科書として勧めていることが明かされていますが、さもありなんです。
総括すると、漫画家志望者にとって実践的な内容になっているかは疑問、しかし漫画読みが自分の読みレベルをアップさせる効果は確実にあると思います。その意味で、タイトルに「漫画描き入門じゃありません」と銘打たれているのは非常に正しい。
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その一方で、藤島先生の限界というか、衰えみたいなものも見えた気がするんですよね。
藤島先生は「とにかくわかりやすく」をテーマにネーム切られていると語っておられますが、それは先生の作品づくりすべてに共通していると思うんですよ。
タイトルからして「逮捕しちゃうぞ」は婦警さんもの、「ああっ女神さまっ」は女神さまのお話、というのが一瞬で伝わってきます。
しかし「パラダイスレジデンス」はどうでしょうか? このタイトルだけ聞かされて、女子寮が舞台の作品だって想像できる人がいるかっちゅう話ですよ。
あと、この作品は「すごい数の」キャラクターが登場することが想定されているそうですが、第1話には2人しか出てこないし、Wikipediaを見るに、その後もあまりキャラクターが増えた感じはありません。本格的に登場するのはもっと後でも構わないのですが、せめて別キャラの存在を匂わせるくらい第1話でやっとくべきではないのかと思うのですが……第1話だけ見せられたら、寮母さんと初音の2人だけで進行する漫画って言われても驚きませんぜ。
もっといえば、この絵柄が果たして広く今の読者を掴むことができるのかっちゅう問題もあるかと思うんですが。漫画家としての技術と、キャッチーな絵柄ってのは別の問題なので。まあ、この問題は語りだすと恐ろしく不毛になるのでこのくらいにしておきますが。









